良きフォロワーは良きリーダーよりも価値がある話

雪山インターナショナルキャンプでは、非常時のリーダーシップ体験をする雪崩レスキュー訓練を取り入れています。

極限の状態で組織がどの様に行動すべきかはすでに様々な研究がなされておりある程度結果も出ているのでここでは言及しませんが、一つだけ言えるのは良きフォロワーは良きリーダーよりも価値があると言うことです。

タフな状況のリーダーシップ

雪崩レスキュートレーニングは、1つのパーティーが山で雪崩に遭遇し、隊員の一人が雪崩に流されたと想定して残りのメンバーが遭難者を捜索する訓練です。

使用する道具はシグナル発信機能があるビーコン、携行スコップ、雪を刺して遭難者を探すプローブと呼ばれる長い棒を使用します。

まずは発信機のシグナルである程度の遭難者の位置を探しあて、プローブ(長い棒)を使い遭難者がどこに埋没しているのかを特定し、スコップで掘って救出します。

人間の息をとめて生存できる時間は最大15分と言われており、15分以内(できれば7分以内)には必ず掘り出さなくてはいけません。

雪崩発生を受けてリーダーは瞬時に隊員に大量の意思決定を出さなくてはいけません。

 

 

  1. 全員のビーコンを受信モードに切り替える
  2. ビーコン捜索隊とプローブ捜索隊に分ける
  3. 事故発生状況の記録係、タイム計測係を決める
  4. 2時雪崩に備え、見張り役を決める
  5. 遭難者消失点を特定する
  6. 遺留品を特定する
  7. 警察に連絡する / 連絡するか判断する
  8. 隊員の荷物をどこに置くか判断する
  9. どの地点を重点的に捜索するのかを決める

 

これは我々登山ガイドがガイド試験の時に受ける訓練の採点ポイントですが、実際に非常時に一瞬でこの量の意思決定を迫られるリーダーはかなりタフで冷静出なければなりません。

リーダーが2人いる!?

 

昨年行った雪山インターナショナルキャンプの雪崩レスキュートレーニングではこんなことが起こりました。

訓練ですのであらかじめ5人チームでリーダーを決め、作戦も事前に考えて訓練に挑みました。リーダーは中学3年生の男子が務め、最初は指示を的確に出し隊員もそれに従っていました。しかし、埋没点よりもだいぶ遠いところを捜索してしまい(これは講習時間の関係でビーコンの電波特性を教えていなかったためで、彼のミスではありません。ビーコンの電波特性に興味のある方は調べてください。)10分経っても埋没者の特定ができずにいました。

そうすると本当にこの場所を探していていいのか、リーダーの言っていることは違うんじゃないのか?とチームに不穏な空気が漂ってきます。

そしてついに、リーダーがこっちをもっと探そうと言った時に一人が「いや、俺はこっちを探す!」と言い最初の離反者が発生しました。しばらく他の隊員は様子を見守りますが、その後はなし崩し的に他の隊員もバラバラに探し始め、チームが瓦解してしまいました。

二次雪崩のチェックも疎かになり、リーダーがここをプローブで探してくれと指示を出しても「いや私はここを掘る」とシャベリングをし出したり、最後はリーダーが茫然自失で指示を出さなくなり、チームが完全に崩壊してしまいました。

 

リーダーが背負う本当の責任

 

最終的に救出には15分以上かかり捜索は大失敗に終わったのですが、この失敗から学べることはたくさんあります。

救助の目的は「いち早く掘り出すこと(二次雪崩に合わない様に)」ですが、その次に大切なのはここで重要なのは「最終的にこの事故の責任を取るのは誰なのか」と言うことです。

実際の冬山では、どんな結果であれリーダーはほとんど全ての責任を社会的に背負うことになり、何十年にもわたる裁判をしていた山岳ガイドや多額の賠償金を請求されているリーダーがいます。

そのリスクを背負う覚悟を持つものがリーダーになるのですが、フォロワーもそこをよく理解しなくてはなりません。

ちなみに、極限状態の山岳地帯でリーダーが離反するフォロワーを止める手段は暴力と脅ししかなく、実質的にリーダーはフォロワーがフォローしないとリーダーとして存在し続けることができません。救助中に殴り合いの喧嘩をしている場合ではないですからね。(実際にそう言う事例はたくさんありますが。。)

 

フォロワーの心構え

 

そしてフォロワーがやるべきことは、

  1. 自分たちが選出したリーダーを信頼する
  2. そうは言ってもリーダーも人だから間違うので、知恵を出し合う
  3. しかし最終的な責任はリーダーにあるので、最終決定には従う

です。

緊急時はみんなアドレナリンが出て、自分の思っていることを様々口に出します。しかしチームで行動する時にはそれをまとめ、意思決定するリーダーが重要です。

そのリーダーが余計なことを考えずに意思決定に集中できる環境を整えるのが各フォロワーの務めとなります。

そのことを中学生のうちから経験しておくと、チームの中の私の役割が見出せるようになりチームプレーで物事に取り組む時にリーダーではないのにすごく大事な存在感を出せるようになります。もちろんそのような経験があるとリーダーとしても素晴らしく輝けますが、素晴らしいリーダーは素晴らしいフォロワーが作り上げていると言うことを早い時期から理解すると、人間社会で生きて行きやすくなるでしょう。

 

リーダーシップとフォロワーシップは表裏一体

 

リーダーシップという単語はどうしてもリーダーに焦点が集まりがちですが、本当のリーダーシップ理論はフォロワーシップと共に論じないと無力なリーダーになってしまいます。

実際に人生で遭遇する可能性の極めて低い雪崩レスキューを体験してもらう理由は、非常時のリーダーシップを経験するのにとてもいいシチュエーションだからなのです。

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